HOME>味覚障害について
味覚障害について
味覚とは?
ヒトの五感の一つの感覚である味覚は、生理学的には、甘味・酸味・塩味・苦味そして旨みの基本味から構成されています。
また風味と呼ばれる感覚は、嗅覚・視覚・聴覚・記憶から味覚を強調するものです。
子供のころ、台所で調理する母親の気配と、とんとんという包丁の音やジューッという焼き魚の音を聞くことによって、思わず唾液がにじみ出てきたのを思い出します。また、レモンの絵を見ると、じわっと唾液が出たり、この風味の感覚は、味覚や食欲を強調しています。
味を認知する味覚受容器は、主には舌の表面に分布していますが、他にも口腔の粘膜や飲み込む過程の喉の粘膜にも存在しています。つまりお口全体で味わっているという事です。
そのメインで味覚を感知する舌にある受容器は、「味蕾(みらい)」と呼ばれています。
ここに味物質が接触すると、その化学刺激に反応して、神経伝達し大脳皮質の味覚野に届けられます。そして、もっと味わえるように唾液を出す指令や、もっと噛むようにと顎を動かす咀嚼筋の運動を指令します。
味覚障害について
味覚が低下する原因はいくつもあります。その中でも最も多いのは、薬剤性の味覚障害です。そのほかには、末梢・中枢の神経障害、亜鉛不足、口腔乾燥症などの口腔疾患、全身疾患、放射線治療後などがあります。
味覚の経路で考えると、(1)口で味覚をキャッチする (2)味覚神経を伝わって、味情報を脳に伝える (3)情報(味・匂い・見た目など)が脳に集まり「味」として認識される の流れで進みます。この(1)(2)(3)のどこかで障害されることによって、味がわかりにくくなったり、美味しく感じなくなったりします。
また口の中の味わいとしては、
- 苦味 。。。歯周病による歯周ポケットから排出される膿の味
- 塩味 。。。口腔内の炎症組織からの出血や組織液の味
- 酸味 。。。差し歯などに使われている様々な異種金属間の電解質反応が言われます。
薬剤性の障害では、味蕾の味細胞には、亜鉛が必要物質ですが、薬剤により亜鉛と薬剤が結合して、結果として亜鉛不足になり味覚障害を引き起こします。
味覚障害との関連症状は?
以下のような症状が味覚障害に関係することがあります。
- 味がわからずに、美味しくない。
- 食欲がない。
- 舌が真っ白になった。
- 口のネバネバ感、ヒリヒリ感
- 口がしみる、乾く。
- 入れ歯があたって痛い。
- 痩せた
高齢者の味覚障害は、要注意!
味覚障害は、高齢者の3人に1人に認められます。(36.6%)
高齢者に味覚障害が多い理由としては、全身の病気が多いこと、お口の病気が多いこと、薬を服用している人が多いこと、唾液が減ってお口が乾燥しているのが多いことなどがあげられます。
味がわからずに食欲が低下することによって、低栄養を引き起こしやすくなります。そして体の感染が起こりやすくなる悪循環となります。
お口の病気で味覚障害が起きるメカニズムは?
お口の病気で起こる味覚障害では、味覚センサーである「味蕾」の状態が注目されます。
唾液量の低下などでの口腔乾燥症では、お口の湿潤や流動性が保たれずに、味蕾に味物質が届かないことが問題となります。
また口内炎、口腔粘膜疾患、口腔カンジダ症、舌炎などによって、味蕾が傷つき壊れてしまう事が起こります。
そして栄養障害や亜鉛欠乏、鉄欠乏によっては、味蕾の再生が起こらなくなるのが問題です。
特に高齢者の味覚障害では、唾液量の低下が多く認められます。
この分野に対して、歯科医療の対応が必要とされます。