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咬み合わせ治療/ますち歯科診療室 MASUCHI DENTAL CLINIC
咬み合わせ治療について
現在、かみ合わせのアンバランスによる口腔の症状、顎関節、頸部、そして姿勢においての不具合を訴える人は、少なくありません。または、不具合の原因が、かみ合わせの力に起因することが分からずに困っている人も多数見受けられます。それは、マス・メディアでもよく取り上げられますが、実際のところまだまだ科学的に解明されていない部分もあるのが事実であり、我が国の歯科医療で、横並びに一様の取り組みがなされているかと言えば、難しいのが現状です。
当診療室では、従来のかみ合わせ療法に加えて、平成18年より福岡県北九州市の筒井照子先生の主催する咬合療法研究会に所属し、ストマトロジー(口腔医学)の分野での研鑽と実践を積んできました。
ストマトロジーとは、生体のなかで口腔のもとの状態、あるべき状態に戻すことに主眼を置いた考え方です。我々のからだは、復元、回復の能力があります。しかし、良くない機能、形態の中では、それを押しのけて回復することは、難しいのです。今までの歯科医療は、デンティストリー(歯科修復学)の進展にエネルギーを費やす傾向にありました。しかし、いくら形態を理想的にしても、機能が伴っていなければ治癒への道を進めないケースが存在します。そこで、なぜその形態が変化したのか、どうしてその機能の習慣となっているのかを見定め、そこからアプローチしていくのが、ストマトロジーです。
歯列、おもに下顎の垂直的、水平的なアンバランスが生じるとき、生体の許容範囲中は、症状として現れませんが、許容量を超えるとなんらかの症状を発症すると考えられます。それは、ケースバイケースであり、個人差もあります。
私たちの「かみ合わせ治療」の思考は一点です。
それは、生体のあるべき姿、あるべき方向に戻すこと、または戻ろうとする生体のお手伝いをすること「ストマトロジー」の実践です。
そのためには、適確な診査診断、そして様々なケースに対しての治療の引き出しを整備していく必要があります。
歯科医療の必要性と可能性が拡大するこの分野は、当診療室の大きな責務と考えております。
かみ合わせがアンバランスになる原因とは?
先天的な遺伝や、骨格的な要因のほかには、私たちは、後天的な生活習慣での顔、顎、口に加わる習癖としての「力」の存在に着目しています。これは、矯正のページでも述べておりますが、歯列の不正咬合の原因になります。
主に上げられるのは、
- 就寝時の姿勢習慣
- 頬杖
- 口唇の緊張や施緩
- えくぼの際のお口の周囲筋の緊張
- 舌の緊張
- 口呼吸
- 加齢変化
- 職業等での一定姿勢の継続 または歯科治療受診による歯列の形態変化
- ブラキシズムと呼ばれる無意識の歯ぎしり
- くいしばり
- かみしめ習慣 などなど。。。
習慣的な お口周囲の出来事により、歯列の変化や、下顎のずれは生じていくことは多いと考えられます。
診査診断
ケースにおいて必要な検査を選択していきます。
レントゲン診査
咬合力検査
目に見えないかみ合わせの力をME機器「DePros」にて視覚的に解読していきます。その際は、患者さんの顎模型の分析と合わせて診査していきます。
態癖診査
「かみ合わせがアンバランスになる原因とは?」で述べた生活習慣での習癖を「態癖」と呼びます。
問診、視診、触診とともに、全身の姿勢、顔貌、口元、口腔内の写真診査を行います。
「なんで、歯科で顔写真?」
との声を時々耳にします。
当診療室で、お顔の写真撮影をさせていただくのは、日常診療に組み込まれており、療法を進めていくのに必須項目となっていますので、どうぞご了承ください。
顎運動検査
下顎の最大開口運動時の、開口量(上下中切歯の上端間の距離:通常目安は40ミリ前後です。)と運動経路の検査をします。
顎関節は、からだの関節の中で唯一左右2つの関節が協調しあって下顎の運動を支えています。通常垂直に開口するときには、まっすぐ上下するものですが、左右の関節のつまずき・可動に問題がある際は、横にぶれることを認めます。その際自身で耳前に「カクッ、ジャリッ」という関節雑音を感じることも多いです。
また、下顎の左右側方運動経路もチェックします。この際も、下顎の可動域に左右差を認める場合もあります。これも関節の可動制限の現れです。
そして、下顎のリラックスポジションと通常のかみ合わせの終末位置との隔たりの有無と程度も検査項目です。リラックスポジションとは、上下の歯のかみ合わせに規制されない、左右の筋肉(閉口筋)の安定終末位置をさします。筋肉がリラックスできるかみ合わせたい位置と、既存の歯でのかみ合わせ位置が、一致するとは限りません。(一致することが、ハッピーなのですが)そこで、一致しないまでも、その隔たりが、許容範囲を超えたときに、顎関節症状や、口腔周囲、首、肩の筋症状が発生する可能性が生じてきます。治療目標は、その隔たりを許容範囲内(その人の)に修正することとなります。
唾液ストレス検査
就寝時でのブラキシズム(かみしめ、くいしばり癖)が、過度な場合には、下顎の後方移動、舌の沈下(後方移動)のリスクが高まります。それは、気道の狭窄につながり、いびきなど呼吸の低下や、睡眠深度の低下にも関係する可能性があります。また、力が加わる習慣化は、自律神経のアンバランスとも関係することが、危惧されます。それは、自律神経優位な体質化による全身の疲労、疾患の発症にも関与する可能性とも言えます。そこで、交感神経の状態を、唾液中のアミラーゼ酵素量を測定し、現状の説明、生活指導につなげています。
よくある症状は?
- 口腔内においては、歯の知覚過敏やかみ合わせ痛、浮く等の症状は、よく認められます。「むし歯でもないのになぜ?」とお考えのケースは、よくありますが、歯の形態だけを見ていては、正解は出ません。
「木を見て森を見ず」、と言えます。目に見えない力を推測していくことは、大切です。
- 歯周病の進行も見逃せません。疲れた時によく腫れる等は、細菌の存在、それを刺激する力の存在を考えることは、私たちには必須条件です。歯みがきが出来ていない!だけには焦点が、当たらないことも多いです。
- 左右の頬の内側の口腔粘膜の白くぎざぎざした筋、舌の辺縁のぎざぎざした筋、発赤を所見として認めることは多いです。これらは、無意識でのお口の過緊張による歯型の可能性が強いと考えられます。(粘膜の他の疾患と鑑別する必要があります。)知らず知らずに吸ったり、かんだり、押しつけているのです。その際に、粘膜がひりひりする症状を訴えることもあります。
- 患者さんの主訴のケースは少ないですが、以前よりお顔の非対称に気付かれるケースもあります。もちろん個性もありますので、一概には言えませんが、左右の眼の大きさ、口角のあがり、鼻唇溝の深さ、お顔の面積の左右差は、私たちのチェック事項です。
- 顎においては、顎関節症状を訴えることは多いです。それは、お口の開閉の際に耳前の関節部に音がする。(カクッ、バキッ、ジャリ)それに伴い、顎が不安定になります。または、痛みやだるさを伴い、食事で長く噛んでいられなくなる、そして、口が開かなくなる等です。
- 関節部周囲においては、痛み以外に、耳鳴りを呈する場合もあります。その際は、耳鼻科疾患との鑑別が必要になります。
- また、関節がルーズになり、関節脱臼(顎が外れる)しやすくなることもあります。関節と周囲の筋肉が、協調してないことが疑われます。
- 不定愁訴と呼ばれる症状が存在します。全身の症状ですが、首、肩のなんらかの症状とかみ合わせの関係は、無視できないこともあります。かみ合わせ療法ですべて改善するということは間違いですが、その関与が疑われるときに、療法をトライする価値があるケースもあります。その際は、よく患者さんと相談して療法を選択していきます。
治療
診査診断により生体、顎、かみ合わせのあるべき状態に導くための治療方針を立てます。ケースによっては、思考を重ねながら治療の方向を修正していくこともあります。以下の治療法をケースにより、選択していきます。
- 生活習慣のチェック・改善
日常のふとした習慣「態癖」の存在を意識していただくことは、重要です。患者さん自身の治療への協力をお願いすることも多いです。
癖による力の加わりの緩和、舌、口唇の過度な緊張の緩和、口呼吸の改善をお話しすることは多いです。
- スプリント療法
お口に入れる治療用の取り外し式のマウスピースです。
症状を改善したり、あるべきかみ合わせの方向へと顎の位置を誘導していきます。ケースによて、マウスピースの形態を選択していきます。
通常診査診断の後、上下の歯型をとり、1週間後に完成装着となり、治療を開始してゆきますが、開口障害があり歯型がとれないケースや、関節筋肉痛などの緊急性のあるケースでは即日で完成させる「ミニスプリント」(即効性が期待できる装置ですが、長期間の装着は禁忌です)を作成し、症状が緩和後に、通常のスプリントを作成する場合もあります。
- リシェイピング
かみ合わせのバランスの調整です。歯に加わる力の分散を行います。過剰なすり合わせが起こると、歯の表面は、摩耗して、力の接触面は、面接触となります。しかし、機能的な接触は、点接触ということは良く知られています。判断のもと、面接触を点に修正することもあります。もともとの「歯」の溝は、食物と力の逃げ道です。「道」の側溝をイメージしてみてください。適切な「遊び」は必要です。
「高いからまず削る!」のは、御法度と考えます。
- 咬合再構成
リシェイピングと複合して選択します。歯のかみ合わせ面への樹脂材の添加や、不適な差し歯の存在や、広範囲な修正が必要なケースでは、新しい適正な差し歯で歯列のバランスを整えていきます。
通常は、その前に仮差し歯(プロビジョナルレストレーション)で状態を確認していきます。
- 矯正治療
歯列アーチの狭窄や、奥歯の高さの低下などによる下顎の後退などに対して、矯正治療が有効なケースもあります。通常は、症状の改善のあと、さらに一歩踏み込んで、その後の症状再発のリスク軽減のために、提案相談することが多いです。
症例・治療例
ここでは、ますち歯科診療室で実際に治療した症例をご紹介しています。
かみ合わせが、低くなったケース
ケース1
さし歯をつくり直して、その人本来の、かみ合わせの高さに戻してゆきました。
かみ合わせが、低くなったケース
ケース2
かみ合わせ平面が、左右的にずれたケース
かみ合わせ平面が、前後的にずれたケース
かみ合わせの不正による 顎関節症を発症したケース
初診時の口腔の状態
下の奥歯が欠損していて、
全体的にかみ合わせの高さが低下している。
上の義歯にマウスピースをセットして、
顎関節の痛み症状の改善を行う。
下の奥歯を部分義歯によって改善し、
全体のバランスの安定を図る。
上の義歯を制作し、安定を確認した後、終了となる。
かみ合わせが前後にずれたケース
かみ合わせが前後左右にアンバランスなケース
顎の痛みと肩こり・上顎前歯の不正のケース
態癖セルフチェック
下記の項目が、自分に当てはまるかどうか、チェックしてみてください。
- 寝る時や起きた時の決まったポーズはありますか?(例:うつぶせ寝)
- TVをみたり、本を読む時はどんな体勢ですか?(例:頬杖)
- 爪かみなどの癖はありませんか?
- 唇を巻き込んだり、なめたり、咬んだりする癖はありませんか?
- 口元が緊張したりしませんか?
- 正面のお顔の写真で左右の違いはありませんか?
上記の項目にひとつでも当てはまった方、自覚している事があれば、まずは意識して癖を直してください。そうすることによって、歯がむし歯でもないのに、しみたり、浮いたりする症状がなくなる場合があります。 また、顔や表情が変化することも十分期待できます。