HOMEコラム>エルビウム・ヤグレーザーを使用する治療ってどんな効果?

エルビウム・ヤグレーザーを使用する治療ってどんな効果?:コラム/ますち歯科診療室 MASUCHI DENTAL CLINIC

レーザー治療の説明

現在、歯科医療において数種類のレーザーが使用されてきてます。

口腔軟組織の切開・切除には、従来から止血効果の高いCO2レーザーやNd;YAGレーザー、半導体レーザーなどが有効で汎用されています。

当診療室では、医療テーマである「健口から健康の実践」を考えるときに、歯性病巣感染の感染源になりうるぺリオ(歯周病)に対しての治療の徹底性を追求するために、Er;YAGレーザー(エルビウム・ヤグ・レーザー)を治療機器として選択しています。

エルビウム・ヤグレーザーの特性として、他の種のレーザーと比べて、照射深度が、組織表層に限られることで、組織深部への影響が少なく、安全であるという事が、機器の採用理由の一つです。

エルビウム・ヤグレーザーの硬組織への能力は?

このレーザーは、硬組織の優れた蒸散能が、報告されています。
蒸散能とは、レーザー光の照射による硬組織表層の分子構造を結合している水酸基(OH基)にそれに特異的に吸収特性のある波長(2.94nm)のレーザーエネルギーが吸収されることにより、瞬時にその成分(水)が蒸散(蒸発)、その結果分子間の結合がとかれ、回転機器で切削するのと同効果(状態は異なるが)を得られます。また、他の種の高出力レーザーと比べて、エルビウム・ヤグの波長は、水酸基に対しての特異性が優れていることも事実です。

当診療室がエルビウム・ヤグレーザーに求めることは?

上記のような、硬組織に対しての能力の有意性は証明されておりますが、臨床において、対象となりうる際のすべてのう蝕(むし歯)に対して、レーザー機器のみで治療するには、時間をかなり要するという事実もあります。

レーザー機器使用か、回転機器使用かを考えるとき、患者さんへの時間的苦痛や、治療後の効果に関しては、従来の回転機器を使用することでも、術者のスキルによって組織への侵襲を最小限にすることも実現でき、術後の効果に優劣がないと考えております。よって、当診療室では、硬組織治療(歯根面の知覚過敏症、歯周ポケット内の歯面・歯石の殺菌と病巣顎骨表層の殺菌を除く)いわゆるう蝕治療には、積極的には使用しないスタンスが現状です。

では最も何を対象に、レーザー治療を選択するのか?

軟組織の病巣をターゲットに積極使用を考えています。

最も使用頻度が高いケースは、前述しましたぺリオ(歯周病)治療での、中等度以上の炎症所見を有する部位に対してです。ぺリオ治療並びに定期的メンテナンスとしての進行予防での従来の機械的クリーニングを行う前に、エルビウム・ヤグレーザーの歯周ポケット内照射を行い、ポケット内の病原性細菌、歯石の殺菌・無毒化を先発として組み込んでいきます。これは、治療後の一過性の菌血症の予防、軽減にも効果を有します。

歯科処置と菌血症とは?

菌血症とは、細菌が一過性に血管の中に入り込むことですが、健康な人であれば1時間以内に最近はいなくなります。しかし、病巣の進行があり、炎症症状が強く出血を伴うケースや、心疾患のリスクを持つ人、糖尿病の進行がある人などは、その限りではなく、その際は、術後に(ケースでは術前に)抗生物質の投薬で対応を行います。

菌血症頻度(%)の説明

抜歯 18~100(%)
親知らずの難抜歯 55(%)
スケーリング(ぺリオ治療) 8~79(%)
歯周外科治療 36~88(%)
ブラッシング 25(%)

Moreillon&Que 2004

上記を見ると、状態が悪い時のブラッシングでも、菌血症は起こっています。必要な治療でのリスクを最小限にするために、エルビウム・ヤグレーザーの使用は、有効であることが言えます。

参考文献)

モリタ DMR No,218
日本歯科評論「歯周治療分野におけるEr;YAGレーザー応用の現状
東京医科歯科大学 石川 烈ほか
デンタルマガジン別冊 「Er;YAGレーザーの可能性を探る」山本敦彦

 

>>コラムのトップに戻る

バックナンバー
pagetop