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口腔ケアマニュアル ~お家で介護される方向け~:コラム/ますち歯科診療室 MASUCHI DENTAL CLINIC

口腔ケアマニュアル ~お家で介護される方向け~

実はお口のケアと発熱の関係があったりと、口腔ケアはとても重要です。
口腔ケアをすることによって、改善がみられます。

口の中をのぞいてみましょう

  1. 黒い穴があいていませんか?
  2. 歯のつけ根が黒くなっていませんか?
  3. 痛みはありませんか?
  4. 冠がはずれていませんか?
  5. 歯ぐきがブヨブヨしていませんか?
    赤く腫れていませんか?
    出血していませんか?
  6. 歯がぐらぐらしていませんか?
  7. 口臭はありませんか?
  8. 入れ歯が落ちてきませんか?
  9. 入れ歯がこわれていませんか?
  10. 入れ歯が汚れていませんか?
  11. 歯ぐきに傷ができていたり触ると痛がりませんか?
  12. バネのかかる歯はかけていませんか?
  13. 舌に苔のような汚れはついていませんか?
  14. 特に麻痺側に食べ物のカスがベットリついていませんか?

お口のお手入れを始めましょう!~日常的な口腔ケアの実施~

1.声かけをする

「うがいをしますよ」「口の中をきれいにしますよ」と本人に声をかけましょう

2.体位を整える(安全で疲れにくい体立をとりましょう)

全身状態やADLなどに応じて適切な体位を整えます。

座位や半座位は誤嚥しにくい安全な体位とされていますが、口腔ケアを実施する場合にはさらに横向きにして頭部をやや前屈した状態にすると誤嚥が防げます。

ポイント

可能なら後ろから頭を抱えるように口腔ケアを行うとやりやすいようです。片側に麻痺のある場合は麻痺のない側を下にすることで誤嚥を防ぎます。

3.口腔ケアの実施

1.うがいをしましょう。(入れ歯のある人は入れ歯をはずしましょう。)

コップや吸い飲み、ストロー等を使って口に含み口を閉じてブクブクします。

ポイント

虫歯や歯周病がある場合、冷たい水ではしみる場合があるので、ぬるま湯を使ったほうがよいでしょう。

2.入れ歯のある方に(着脱のポイント)

総入れ歯の着脱方法

部分入れ歯の着脱方法

入れ歯を洗いましょう

入れ歯の入れ方ポイント

入れ方ははずし方の逆の手順で!
入れ歯の中央部を人さし指で押し上げます。

入れ歯の保管

入れ歯は乾燥させると変型したりわれやすくなるので、特別に指示がある場合をのぞいて、寝るときや使用しないときは水に入れた容器に保管するのが基本です。

4.口の中の清掃

いろいろな種類の用具があります。大きさ、硬さなど詳しくは歯科医師、歯科衛生士に相談しましよう。

歯ブラシを使って

歯のある人は歯ブラシを用いた清掃が重要です。1~2本ずつ小刻みに動かします。

スポンジブラシを使って

口の中の粘膜の清掃に使います。

※ガーゼでも応用できます

歯ブラシの取り替え時期

歯ブラシの裏から見てこのようになっていたら変えましょう。

用具のケア

歯ブラシや歯間ブラシ、スポンジなどはこまめに洗いながら使いましょう。

5.最後にうがいをしましょう

お口スッキリ、さっぱり!

清掃用具のいろいろ

これらの用具はスーパー、薬局等で購入できますが
歯科医師、歯科衛生士の指導を受けてから正しく使いましょう。

こんなときどうする?

case1.口を開けない

口の中が過敏な状態になっている場合があります。
口の中に口内炎や傷があり、痛みのため口を開けない場合も考えられますので、口の中をよく見てみましょう。

POINT

いきなり口に触るのではなく、肩や顔に触れたり、マッサージをしたりリラックスさせてから口の中に触るとよいでしょう。

case2.経口摂取を行っていない(経管栄養中など)

口から食べなければ口の中は汚れない・・ だから口腔ケアをする必要はないと思っていませんか? 口の中には細菌がたくさんいるので食べていなくても口腔ケアは必要です。しかし、唾液や水を誤嚥する危険性が非常に高いので注意が必要です。

うがいのできない人は?

吸引器を使ったり、顔を横向きにして、口の中にたまった水を出す方法もあります。口の中に残った水はガーゼやスポンジ等で吸い取ります。

case3.認知症がある

認知症と一言で言っても状態や程度が異なるため、それぞれに応じた対応が必要となりますが、日常的な声かけ、雰囲気づくりが大切です。慣れた雰囲気で無理強いせず、機嫌が良いときを見計らって口腔ケアをしましょう。

自分でできる人はまず自分で

嫌がる場合は介護者が一緒に歯みがきやうがいを行い、その動作を見せながらするのもよいでしょう。その後、必要な場合は介護者が口腔ケアを行います。
まず、歯ブラシに慣れることも大切です。
(「case1 口を開けない」参照)

case4.口腔が乾燥している

唾液の量が少なくなると、口の中が乾燥してしまいます。
このような場合は清掃だけでなく保湿も重要です。

  1. 口腔ケア(感染予防)
    スポンジブラシなどで口の中を湿らせてから口腔ケアを行います。
  2. 保湿(乾燥予防)
    口の中に潤いを与える保湿剤もあります。
    詳しくは歯科医師、歯科衛生士に相談してください。
POINT

部屋の加湿に気をつけたり唾液腺をマッサージするのもよいでしよう。

補足

1.要介護高齢者等における口腔ケアの重要性について。。。

口腔内には、自浄作用と呼ばれる唾液の流れや摂取した食物、咀嚼や嚥下に伴う舌、口腔周囲の筋肉の動きなどによる自らきれいになろうとするメカニズムが存在します。この作用は、様々な疾患の発症や治癒過程に伴う経口摂取の中断や口腔内に及ぶ麻痺などによって著しく低下します。特に、経口摂取を行っていない方やペースト食などほとんど咬むことを必要としない食物を摂取している方は、口の動きが制限されます。さらに唾液の分泌も少なくなるために、この自浄作用による清掃効果がほとんど期待できなくなるのです。その結果、口腔内の汚れはすすみ、細菌の増加につながります。
よって、口腔における自浄作用が低下し、口腔清掃の自立度が低下した時には、介護者の手当て(介護)が、重要な役割となるのです。

2.口腔ケアと介護予防

高齢者にとっての肺炎は死因の多くを占める疾患です。
ひとたび、肺炎に罹患すると認知機能や生活機能の低下を招きます。
口腔ケアの継続によって肺炎や、インフルエンザの発症を抑制することで、高齢者の介護予防が実践されます。

高齢者の免疫機能と深く関連する低栄養の原因は、さまざまですが、そのひとつに摂食・嚥下機能の低下があげられます。高齢者の摂食・嚥下機能の向上は、栄養状態の改善につながり、そして免疫機能の向上に寄与します。つまり、感染症の予防に有効であると言えます。

また、しっかりした歯とかみ合わせは、からだのバランスを保つのに大変重要な役割を担っています。総義歯をはずすと、歩行のスピードが落ち歩幅が小さくなるという報告もあります。つまり、かみ合わせや顎の安定と、歩行の安定には密接なつながりがあると言えます。
最後に、大脳皮質における機能局在を示す「ペンフィールドの図」を紹介します。
大脳皮質の感覚野において顔、とりわけ口周囲の運動が、大きく大脳の活動と関係しています。そこで、口腔ケアによって加えられた刺激が、口腔内の感覚器を経て脳に伝わり、認知機能に影響を与え得ることも考えられています。
つまり、高齢者にとって、認知症予防での咀嚼、発語の重要性は大きいだけでなく、介護が必要となってからの介護者の口腔ケアによる認知機能低下の予防という意義も大きいと言えます。

おわりに

本マニュアルは、介護の現場でお仕事される方の口腔ケアをお手伝いする目的で作製いたしました。本書は、2004年に発行された新潟県の「情報ネットワークを活用した行政・歯科医療機関・病院等の連携による要介護者口腔保健医療ケアシステムの開発に関する研究」班発行の口腔ケアマニュアルをご厚意より原案とさせて頂いております。

要介護者及び家族に必要な部分をコピーし活用していただければ幸いです。

このマニュアルは、あくまで基本的な方法ですので、すべての要介護者の方々に当てはまるわけではありません。その際は、歯科専門職や、いろいろな職種との「顔の見える並列での連携」を築き、要介護者の日常生活が少しでも明るく、楽しい毎日になるように、役立てていただければと思います。

口腔ケアマニュアル ~お家で介護される方向け~(1,355KB)

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