なぜ歯科で骨粗しょう症のリスク判定?:コラム/ますち歯科診療室 MASUCHI DENTAL CLINIC
・・なぜ歯科で骨粗しょう症のリスク判定?
AI解析「パノスコープ」の実力と意義

歯科パノラマレントゲン画像AI解析による骨粗しょう症リスク判定
当診療室では、メディア社の骨粗しょう症リスクAI判定システムPanoSCOPE(パノスコープ)を導入しました。まず初めに、「なぜ歯科で骨粗しょう症のリスク判定なのか?」という事をご説明いたします。
その前に、骨粗しょう症での医科歯科連携の課題である薬剤関連顎骨壊死MRONJについて触れさせていただきます。骨粗しょう症や悪性腫瘍の骨転移での骨折予防に対して広く使用されるのが、骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤・選択的エストロゲン受容体モジュレーターSERM・抗RANKL抗体製剤・カルシトニン製剤)です。この骨吸収抑制薬が長期投与されていて、糖尿病など易感染性の合併症が多い際に、口腔内の外科処置等の後の治癒機転が正常に進まず、傷口がふさがらずに顎骨が露出し、腐骨化するのが薬剤関連顎骨壊死です。
発症する仕組みは、まず骨吸収を抑制する薬剤の長期投与により、骨の治癒バランス(新陳代謝機能・リモデリング)の変化が生じます。口腔内には多数の常在細菌が存在、顎骨には歯が植立し、歯周ポケットや歯の神経は、体の内部に繋がってる環境があります。治癒バランス変化の中で、歯周疾患の進行により感染が顎骨に及んだり、外科処置後の細菌感染で治癒が阻害されて生じるのが、顎骨壊死の発症メカニズムになります。その予防としては、口腔内の細菌感染、炎症への徹底的対応が必要となります。

ここで本題となります。骨折予防に対して視点を変えて、以前より歯科から医科への早めのアプローチの研究が、歯科放射線学の研究者によって行われてきました。それが、骨粗しょう症リスクの早期診査です。
研究の結果、歯科パノラマレントゲン画像の下顎下縁皮質骨の脆弱度を評価することで、骨粗しょう症のリスク判定が可能というエビデンスが得られました。それは、画像読影に精通した医療者の診断で成り立つものでしたが、近年にメディア社によるAI(人工知能)解析が高精度で可能になりました。
そこで、歯科臨床におけるレントゲン画像の二次活用でのリスク判定を行い、リスクが高いケースには整形外科での骨粗しょう症検診への勧奨をして、骨粗しょう症の早期診断へのプラットホームとなることを目指します。
骨折予防での歯科から医科への連携が大きなテーマです。
骨粗しょう症とは?
骨粗しょう症は、骨密度や骨質が低下、骨折を誘発する病気です。高齢者を中心に増加傾向で、特に50歳代以上の女性に多くなります。我が国の骨粗しょう症患者数は、約1,590万人(男性410万人・女性1,180万人)といわれ、超高齢社会に伴い今後もさらに増加が予想されます。
骨折によるADL(日常生活動作)の低下、そしてQOL(生活の質)の低下は大きな問題となり、我が国の医療・介護費用の増大、医療費の高騰に大きく関与します。





骨粗しょう症による骨折と医療・介護費の増大
骨粗しょう症による骨折は、大腿骨近位部、椎体(腰椎)、橈骨遠位端(手首)に起きることが多く、なかでも大腿骨近位部骨折は、骨折1年後の死亡率は10%にも達します。
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また、大腿骨近位部骨折により、手術後も社会復帰できずに「寝たきり」介護へと進んでいくことが多い状況もあります。骨粗しょう症により、費やされる医療・介護費は年々増加しており、2030年には年間2兆円超まで増大、以後も費用拡大が継続する予想となっています。

骨粗しょう症は、一般に自覚症状が無いために早期発見が難しい病気ですが、検診受診者数は年間約30万人と、全国平均で中高齢の女性人口のわずか5%程度に留まっていることが問題となっています。早めの検診が望まれる状況です。

健康寿命延伸のためには、一次骨折予防が重要
一次予防(要介護状態になることの予防)の対象となる骨粗しょう症リスク判断が望まれる人は、推定約1,000万人といわれます。しかし、骨粗しょう症と診断される機会は、骨折・転倒して初めて病院を受診した時が多いのが現状です。

骨粗しょう症の患者さんの80%以上は女性といわれています。女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにして、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。そのため、閉経期を迎えて女性ホルモンの分泌が低下すると、同年代の男性に比べて急激に骨密度が減少していきます。


一次骨折予防が必要とされる方は、歯科医院の患者さんでもあります。我が国では、歯科パノラマレントゲン画像は、年間に約2,000万枚以上撮影されています。そこで、歯科治療での撮影画像の二次活用で、骨粗しょう症スクリーニングを医科歯科連携で進めていくのが始まりました。
パノラマレントゲン画像による骨粗しょう症スクリーニングの情報共有について
2021年6月に日本放射線学会では、理事長以下で「パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングに関する情報共有のお願い」とした要望書を日本整形外科学会及び日本骨粗鬆症学会に提出しています。歯科レントゲン画像での骨粗しょう症スクリーニングの認識と医科歯科連携の推進への要望書となっています。これをもとに、当診療室も患者さんへの必要な情報伝達を進めていく所存です。


骨粗しょう症リスク判定のための指標は?
顎骨の状態から骨粗鬆症の可能性を評価するための指標として、MCWおよびMCI分類があります。
MCW(Mandibular Cortical Width)は、左右オトガイ孔付近の下顎骨下縁皮質骨の厚さの計測値です。

MCI分類(Mandibular Cortical Index)では、歯科パノラマレントゲン画像において左右オトガイ孔下方の皮質骨形態を以下の1~3型に分類します。2型以上が、骨粗しょう症発症の可能性ありと評価されます。

パノスコープの精度は?
メディア社では、パノスコープはAIが学習した50万件以上の骨密度データを基にしており、その精度は97%といわれています。2025年の大阪・関西万博のヘルスケアパビリオンでは、テーマ「歯科発!骨折予防への挑戦」で出展、歯科AIから始まる医療革新の近未来像を提示しました。日本の医療研究と機器開発能力の高さを、当診療室では今後活用してまいります。


引用
メディア社 パノスコープ製品資料
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